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桂木さんも、俺の傘をちらりと見た。
……。
「佐藤君。雨が強くなる前に帰った方がいいよ」
アクションを取ったのは、桂木さんからだった。
正直悩んだ。桂木さんと一緒に帰るか。
「……」
でも、そうなると桂木さんは傘を持ってないので必然的に相合傘になってしまう。
気にするのは、周囲の目。
「私はここで雨が上がるの待ってるし、佐藤君を困らせたくないし」
「……そう。わかった」
笑顔で喋る桂木さんに、甘えてしまった。
周りの目が気になって、桂木さんと一緒に相傘で帰ろうって言えなかった。
「じゃ……バイバイ」
「うん。また明日」
小さく手を降る桂木さんに、小さく小さく手を降って、ビチョビチョのグラウンドへ歩み始めた。
ザザザ……。
スタ、スタ、スタ。
聞こえるのは、傘に当たる雨音とお気に入りの靴が濡れた地面に触れる足音だけ。
いつも桂木さんと帰ってるから、iPodなんて持ってきていない。
『佐藤君』
いつも桂木さんが話し掛けてくれるから、iPodなんて必要無かった。
『今日のお弁当は、上手に出来てた?』
黙った時間が気まずいのか、質問してきたり、ずっと1人で喋ってたりする桂木さん。
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