柑橘系雨々

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 でも。  ザザザ……。  スタ、スタ、スタ。  今日は桂木さんの話し声は聞こえない。  ただそれだけで。心がもやっとした。  もやっとした理由はわかってる。  ───寂しいから。  でもそれに気付かない振りをしてる自分がいる。  それに何で気付かない振りをしてるのかはわからない。ただ意地を張ってるだけがしれない。  想いは冷めたと言った自分に意地を。 『嬉しい』  でも……。  『佐藤君と、付き合ってるて噂が流れて……私は……すごく、嬉しいよ』  俺も嬉しかった。  笑顔で桂木さんも嬉しいって言ってくれて、もっと嬉しかった。  その笑顔が眩しくて、すぐに視線を反らしてしまった。 『佐藤君』  足が止まった。聞こえるのは、ザザザと当たる雨音のみ。  ……ああッ、もう。  イライラする。  こんな自分に。変に意地張ったり、気付かない振りをしたり、周りの目が気になってる自分に。  気付くと、来た道を戻って走っていた。  走るの傘が邪魔だったから、閉じて走った。  お気に入りの靴がどうとか、今はどうでもいい。  雨に濡れながら。靴が汚れながら。  まっすぐ、桂木さんの元を目指して走った。
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