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あれから考えた。
どうやって、不自然無く桂木さんを『梓』と呼ぶか。
朝くるメールに『梓、おはよ』って返信しようとした。けどよく考えて文章が何か気持ち悪かったからやめた。
学校でさりげなく『梓、ここ教えて』ってノート持って行って勉強を教えてもらうってのも考えた。けどノートを取ってないからそれが出来なかった。情けない。
下校中に『梓、弁当美味しかったよ』って言おうとしたこともある。でもここまできてようやく、言葉の最初に『梓』って付けることが気持ち悪いことに気付いたからやめた。
結局、ストーカー相談コールセンターの田中さんと話してから3日が過ぎたけど、下の名前で呼べず仕舞い。
そして、明後日からテストである。
ノートを全然取ってない俺にとってそれはもうピンチ以外何者でもない。
「生物と、数A、物理にライティングで良い?」
「……国語」
「ほい、経済学」
授業が終わって放課後。
勉強の出来る坂下に生物など。
隣の席の川崎に国語。
後ろの席の降屋に経済学のノートを借りた。
「みんな……ありがと、マジで」
桂木さんを名前で呼ぶタイミングは後回しだ。
今からこれを……今日中に全部写してやる。
「明日には絶対返すから!」
3人に感謝しながら教室を出て、走って図書室を目指した。
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