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テスト前ということもあって、図書室はいつもより少しだけ人が多かった。
奥の方の、4人掛けの席に座って
よし、やるか。
と心の中で気合を入れてノートを開いたときだった。
「私のテスト対策ノート、使う?」
不意に聞こえた女の子の声。
反射的に左を向くと、隣の椅子に両手でノートを持った桂木さんが座っていた。
「わッ、びっくりした……」
いつから座ってるかわからない桂木さんが持ってるノートには、綺麗な字で『テスト対策』と書かれている。
「……使う?」
「え、あ……ありがと」
使っていいなら使わせてもらおう。
「その前に」
と思って、桂木さんのノートに手を伸ばした瞬間。桂木さんに止められた。
「佐藤君……どうして今日、咲ちゃんにノート借りてたの?」
顔の半分を隠して、少し上目遣いでそう聴かれた。
咲ちゃん……? ああ、川崎か。
「降屋にノート貸してって言ったらさ、ちょうど坂下にノート返してたところで。ついでに坂下からもノート借りようとしたら、坂下が国語は川崎から借りた方が良いって言って、それで借りたんだよ」
そんな感じ。
「…………」
ノートで目から下の顔を隠したまま、無言で見つめてくる。
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