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「……ほら、坂下って2年の頃から川崎と付き合ってるじゃん? 坂下が授業中寝てるときに川崎が坂下の顔に落書きしたりさ、あの2人仲良いし彼氏の坂下がそう言うなら間違いないかなぁって思って、さ」
その無言で見つめられる感じが何だか怖くなって、思わず補足を付けてしまった。
「……私も」
そこでやっと、桂木さんが口を開く。
「私も、佐藤君が寝てるとき……いつも机の中にみかん入れてるよ?」
「何してんすか」
俺が寝てるときに入れてたのか。通りで気付かないわけだ。
「それに……私だって、そんなに頭悪くないし。佐藤君が授業中寝てるの見てたから……頑張って、佐藤君でも理解出来るように対策ノート作ったんだもん」
ノートの表紙を自分に向けて、少しだけ哀しそうな表情でそうつぶやいた。
俺でもってのが少し引っかかるけど、確かに。桂木さん賢いんだから桂木さんに見せてって言えば良かった。
「だから……私のノート、使って。でも、その代わり。他の人のノート見ちゃダメ。私のだけ見て、勉強して」
そう言いながら、桂木さんはノートを俺に差し出した。
「……わかった、そうする」
坂下達から借りたノートを閉じて、桂木さんのノートを受け取った。
「じゃ、借りるね……桂木さん」
「うん」
哀しい表情から一転。桂木さんは笑顔で頷いた。
……ちなみに今、『梓』って言おうとしたけど言えなかった。
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