被害者の相談

2/5
2812人が本棚に入れています
本棚に追加
/114ページ
   7月2日。土曜日。  晴れ。 「珍しいな、お前から野球誘うなんて」 「お礼だよ。ノートの」  降屋を誘って、学校のグラウンドでキャッチボールをしている。  本来なら野球部が部活で使ってるんだけど、昨日が試合だったため今日は休みだそうだ。 「で、何?」 「え?」 「お前が俺を呼び出すときは、女にフられたときかお金に困ったときだろ?」  んなことねーよ。  という想いを込めて少し強めでボールを投げた。 「んまあ、ちょっと。相談的な?」  降屋からボールが帰ってくる。 「おお、何だ? 言ってみろ」  バンと音を立てて俺のミットに収まった。 「俺今度みかんちゃんと花火大会行ってくるんだけどさ」  さっきとは違い、降屋の胸元を狙うように弧を意識して投げる。 「あ、俺も彼女と行くぞ。塚本町のだろ?」  バシッと降屋のミットに入った。 「うん。でさ、昨日お母さんに俺の浴衣ある? って聞いたら無いってんだよ」  定期的なリズムで、会話が区切るところで降屋がボールを投げた。 「おう。それで?」  バンと俺のミットに入ったところで、定期的なリズムだったキャッチボールを止めた。 「浴衣ってさ、どこで売ってんの?」
/114ページ

最初のコメントを投稿しよう!