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7月2日。土曜日。
晴れ。
「珍しいな、お前から野球誘うなんて」
「お礼だよ。ノートの」
降屋を誘って、学校のグラウンドでキャッチボールをしている。
本来なら野球部が部活で使ってるんだけど、昨日が試合だったため今日は休みだそうだ。
「で、何?」
「え?」
「お前が俺を呼び出すときは、女にフられたときかお金に困ったときだろ?」
んなことねーよ。
という想いを込めて少し強めでボールを投げた。
「んまあ、ちょっと。相談的な?」
降屋からボールが帰ってくる。
「おお、何だ? 言ってみろ」
バンと音を立てて俺のミットに収まった。
「俺今度みかんちゃんと花火大会行ってくるんだけどさ」
さっきとは違い、降屋の胸元を狙うように弧を意識して投げる。
「あ、俺も彼女と行くぞ。塚本町のだろ?」
バシッと降屋のミットに入った。
「うん。でさ、昨日お母さんに俺の浴衣ある? って聞いたら無いってんだよ」
定期的なリズムで、会話が区切るところで降屋がボールを投げた。
「おう。それで?」
バンと俺のミットに入ったところで、定期的なリズムだったキャッチボールを止めた。
「浴衣ってさ、どこで売ってんの?」
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