俺と煙草とちっさい魔神

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「願い事、ねぇー…。」 そう言われると、何か思い付かないな。 本当か嘘か、すぐ判別出来る願い事がいいんだけど。 「んー………。」 あれ?俺ってこんな無欲な人間だっけ? 「あーもうなげーよ!小泉遥と恋仲になるでいいだろ?はい決定ー。もうキャンセル出来なーい。」 「ちょっ、勝手に決めんなよ!」 じれったくなったのか、とんでもない事を言い出す始末。 ましてやそんな願い事じゃ、叶ったかなんてすぐ分からねぇじゃねーか。 「ほら。早く煙草吸えよ。」 器用に箱から一本の煙草を取り出すちっさい人間。 「煙草を吸わないと、叶わないってことか?」 なんとなく理解した俺は、念のため確認をする。 「おっしゃるとーり。」 …聞いたことねーよ。 煙草を吸って願いを叶えてくれる魔神なんて。 しぶしぶ煙草に手を伸ばし火をつけると、見慣れた煙が煙草の先から天井に向けて上がって行くのが見える。 プルルルル プルルルル 突如鳴り出した携帯に、反射的にビクッとした俺は煙草を落としそうになってしまった。 「誰だよこんな時に…。」 相手の名前を確認すべく携帯を覗くと、ディスプレイには「小泉遥」の名前が。 「…小泉さん?」 いくらなんでもタイミングが良すぎだ。 一瞬出ないか迷ったけど、小泉さんからの着信で出ないわけがない。 「はい、もしもし。」 少しうわずった声になってしまったが、意を決して電話に出る。 「あ…高橋君?」 いつもの可愛らしい声が、よりいっそう可愛く聞こえてしまうのは末期だろうか。 .
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