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「リリリリリ、リョウカ様!!どうなさったのですか!?」
「………あぁ、セツ。軽くでいいから揃えてくれないかな」
広間を出た綾華はたまたま洗濯物を干していた雪女に見つかり急に短くなった髪に慌てて駆け寄り、綾華の辛そうな笑顔を見ては何も言えなくなり小さく頷いて2人は雪女の部屋に移動する
雪女が髪を櫛で解かしてハサミで揃えながら最近のリクオの様子を話している間、綾華はずっと何も言わずに目を伏せて泣いていた
5才の時兄が綺麗な髪だと褒めてから一度も切る事無く伸ばした髪を、自分で切り捨てた
しかま何の覚悟も無く、傘下とは言え他人の為に
「終わりましたよ、リョウカ様」
「ぁ……ありがとう」
腰まであった髪は肩口辺りで切り揃えられ後ろ髪と同じくらいまで伸びていて八二分けだった前髪も同時に眉辺りからシャギーをいれ、全て終わった頃綾華も泣き止み鏡を見て微笑みを浮かべた
「最近の兄さん、どう?」
「お元気です。……リョウカ様を凄く心配なさってます」
「そう……ありがとう。ちょっと散歩行って来るね」
「何時頃にお帰りですか?」
「ん~……」
部屋の時計を見ると丁度22時
綾華は少し悩みながら着物を直すと立ち上がり廊下へ続く襖を開け、肩越しに雪女に帰宅時間を告げ部屋を出て襖を閉めた
雪女は綾華の心情を思い、眠れぬ夜を過ごした
「明日まで帰らないかも」
「リョウカ様……」
「お祖父さん、いいですか?」
「あぁ」
広間で総会中の祖父を訪ねた若菜は湯呑みを置いて腰を落ち着かせ、お盆を置き微笑みを浮かべ祖父に話し掛ける
「綾華の事ですけど……浮世絵町に戻してやってくれませんか」
「……」
「あの子、私やリクオにも本音を話さなくて……心配なんですよ。このまま何も喋らないで1人辛い思いを抱えてるんじゃないかって。あの子は弱くはないけど強くもないんです、リクオと同じ学校へ入れてやって下さい」
「……そうじゃな…承知した」
「ありがとうございます」
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