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関東平野のとある街
浮世絵町
其処には人々に今も畏れられる
極道一家があるという
「若~、若様~」
「お兄ちゃ~ん」
淡い栗色の髪を背中まで伸ばし緋色の髪飾りで束ね上げ桜色の着物に身を包む小さな女の子はマフラーを巻いた少女と手を繋ぎ、一見姉妹にも見えそうな2人は敷地を歩きながら男の子の姿を捜す
暫くして裏庭に来た頃木陰にしゃがみ込んだ男の子を見つけ苦しそうな声に慌てた少女が駆け寄ると、不意に紐に脚を絡め捕られ少女の身体が宙に浮いた
「リ、リクオ様!!」
「セツ!?もう、お兄ちゃん!!」
「やった~、妖怪ゲット~!!雪女か、お前は相変わらずドジだなぁ」
「えっ、えっ!?ちょっ、若!?」
「セツ、セツ大丈夫!?」
「来いよリョウ、一緒に遊ぼうぜ」
「お兄ちゃんったら……待ってよ~」
男の子―リクオは女の子の手を取ると明るい笑顔を向けながら駆け出し、不意に聞こえた叫び声に女の子が振り返ると2人の犠牲者が増えていた
「ったく、お兄ちゃんったらセツに乱暴しないでよ」
「リョウは説教ばかりだな」
「お兄ちゃん!」
「はいはい」
女の子―綾華は双子の兄であるリクオを怒りながらも兄が大好きだった
昔からリクオの後ろばかり着いて行き、何をするのも「お兄ちゃんと一緒がいい」と言う彼女はリクオよりも少しだけ常識があった
妖怪は人々に知られていない
妖怪は一般的に悪者である
「――こうして、子を喰う怖ろしい“妖怪”は陰陽の美剣士によって退治され、それが鎮社されたのが今のアラタマ神社と言われています。以上!私達の班は郷土の伝説をまとめました」
「こっわ~。妖怪伝説だって」
「この辺りに昔出たんだと」
「いや~」
清継達の自由研究発表で教室内がザワめく中綾華は頬杖をつきながら黙々と《馬鹿にされない知恵袋》という本を読み、リクオは周囲発表内容の抗議を叫ぶ。しかし清継に“ぬらりひょん”の真実を聞いて閉口し、綾華は小さく溜め息をつきながら本を閉じた
「どうしたんですか、リクオ様。元気がないですよ」
「うん…ちょっとね…」
「お兄ちゃん、お祖父ちゃんが親分衆の寄り合いに顔出せってさ」
「珍しいな、いつもは綾華だけなのに」
「早く」
「う、うん、行くよ」
その日の夕方、綾華とリクオは祖父に着いて総会に参加する事になった
先頭を歩いていた祖父が襖を開けると後ろに居た綾華が姿を変えた
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