迷宮の言葉たち

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舟 ゆるゆると息を吐き 細長い冥府を横切って ひとひらの舟が姿を現す 黒曜石の切断面に似たどっしりとした舟歌が 動乱の隙間をぬって響いてくる 船縁にぶら下がる櫂のような躯 アダージョの振幅音が腹の底に食い込んでくる 街はどこだ 病没した木箱作りの過疎地はどこだ 暗闇の砂漠に満ちるファラオの群落はどこだ 宇宙の揺らぎの突端で わたしは何を知ったのだろう 限りない無音のほとりを時は流れる 死を飲み込みながら 時は何処へ向かって行くのか .
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