迷宮の言葉たち

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深い眠り 紙テープの降る夜 僕は冷たい火の玉だった 昼の太陽の下 淑女たちが濡らしていった細い路地は 今、深雪に閉ざされた裂氷(クレバス)のように眠っている 解読不明の交信電波が 闇夜に飛び交っていた 時おり鳴く猫の群を視界で追うと 音もなく運ばれていく白い魂たちが見える きっと今夜もどこかで産まれているんだ いくつもの新鮮な手足を動かして 通りすがりの亡霊の誘惑を断りながら 満天の星は流れよ 紙テープの夜を祝福せよ この深い眠りを超えて 冷たい火の玉を超えて 全ての無の叫びを超えて 今 僕は 産まれ出でる .
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