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カシャン!
グランドに誰かが入ってきた。
香緒里だった。
手にはグラブをはめていた。
『投げなよ!』
香緒里が言う。
『この雨でまともに投げれるかよ!』
香緒里は俺の言葉を無視して
バッターボックスの後ろに座り
グラブを構える。
『いつまで逃げてんのよ!』
『お前にはわかんねぇよ!』
『わかんないよ!逃げてるやつの
気持ちなんか!!』
『…。』
『次郎が行けないなら、あんたが
連れてってみせなさいよ!!
次郎がいないからって甘えて
夢諦めるやつの気持ちなんか
わかりたくもない!!』
香緒里の声は震えていた。
こいつは全部わかってるんだ。
俺の気持ちも、次郎の想いも。
『グラブ動かすなよ…。
そこから絶対!』
俺は振りかぶり全力で投げる。
ズバンッ!!
雨音を、切り裂くように
グラブにボールが入る音が
鳴り響いた。
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