怪衰欲

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巨大イカキングは現在海の深いところを泳いでいる。 浜辺からそこまで離れてはいないため、刀をぶら下げたセンセーはすぐにイカキングの前まで来た。 生徒全員が浜辺で固唾を飲んで見守る。 刹那、イカキングがセンセーに襲いかかった。 センセーはたちまちイカキングが起こした凄まじい水しぶきに飲み込まれた。 辺りからどよめきが起こる。 「あっ……あれ!」 アスカがイカキングを指差した。 なんと、イカキングの頭部にカタナが二本突き刺さっており、センセーがそれにしがみついていた。イカキングは痛みでのたうち回っている。 「すっ……すげぇ!」 あちこちから歓声が巻き起こった。 センセーの剣の腕は相当なものだとは聞いていたが、これほどとは。 「あ……危ない!」 エドナの声。 イカキングが長く、太い足でセンセーをはたき落とそうとしている。 が、自らを傷つけることを恐れたか、勢いはない。 とはいえ、巨大な足だ。当たればただでは済まないだろう。 「おらぁぁぁ!」 センセーは必死の形相で右手の刀を引き抜くと、それでイカキングを斬りつけた。 イカキングの勢いが強くなる。 反撃とばかりにイカキングの足がセンセーに当たった。 「がっ……」 その衝撃でセンセーの左手がカタナから離れたが、すぐさま掴む。 しかし今の一撃で要領を得たのか、イカキングの足はセンセーに次々と当たる。 このままではセンセーは振り落とされてしまう。 そう思ったとき、シレンが一歩前へ出た。 助けに行くつもりか。 が、右手にカタナを握っているが、浮き輪はつけていない。 「アニキ……大丈夫なの?」 ペケジが心配そうに声をかけた。 無理もない。闘う以前に深いところに行って溺れないかと心配なのだ。 「大丈夫だよ。見て」 シレンの肩に乗っているコッパが胸を張って言った。 「あの怪物、センセーとの闘いで大分浅瀬に来てる。シレンでも溺れないよ」 確かに今イカキングがいるところは、腰ほどの深さしかない浅瀬だ。 「無事に帰って来て」 アスカが祈るように言う。 シレンは笑って頷くと、イカキングの方へと駆けていった。 派手に水しぶきを立てて向かっていく。 イカキングまであと二十歩……十歩……五歩。 というところで派手に転んだ。 全員が軽くずっこけた。 「おい! そこはビシッと決めろや!」 必死にしがみついていたセンセーもツッコミを入れていた。
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