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神社の本殿までの長い道にたくさんの人、提灯、店。
これだけで大体何が起こっているかわかるはず。
え? 葬式?
そうそうセンセーが事故でね……ってそんなわけない。
あれ? センセーが後ろにいたよ。怒ってる。まずい。逃げろ。
鳥居をくぐり、人だかりに身を隠す。
というわけで、年に一度行われる夏祭りに来た。
神社の本殿までの道にはたくさんの店が並べられ、人も多い。アスカとはぐれないように気をつけて祭りを楽しめるといいんだが……。
「それにしても、みんなを誘えなかったのが残念ですね。お竜さん」
アスカの言う通り、前日に教室のみんなを誘ったのだが、みんな都合が悪いとかで来れなかったのだ。
大人数でこれなかったのは残念だったが、仕方ないから二人で祭りを満喫するか!
「満喫するよ!」
思わず声に出ていた。
アスカはしばらく返答に困ったようだったが、やがてうんと頷いた。
「やぁやぁお譲さん方。祭りを楽しんでるかい?」
何件目か店を回った時、馴れ馴れしい男の声が聞こえてきた。
ナンパだったらぶっ飛ばしてやろう。そう考えながら後ろを向いた。
「あれ? あんた……」
振り向いた先には、水色の浴衣姿で、右手にりんご飴、左手に水風船のヨーヨーを吊るし、顔にはなぜかマムルのお面をつけた男がいた。
明らかに祭りを堪能している格好だ。
しかし、それ以上に気になることがある。
「シレンじゃないかい。来れないって言ってなかったかい?」
確かにシレンだった。
背丈や髪形。何より右腕からワナ師の腕輪がのぞいていたのだから間違いない。ところが当の本人は首を傾げた。
「シレン? 拙者はお主の友人とは人違いだぞ」
なんだと? 人違い? 確かにいつもいっしょにいるはずのコッパがいない。
何よりあのシレンが饒舌なのが私の疑いの心を惑わしていた。
「くすっ。そうですか。ではあなたのお名前は?」
アスカが口に手を当て笑いを漏らし、聞いた。
冗談に乗ってやろうということか。
シレン(?)は、待ってましたとばかりに見栄を切る。
「よくぞお聞きなすった。拙者、お祭り仮面と申す者でござる」
「仮面って、マムルのお面じゃないかい」
「ふっふっふ。これはマムルではない。マムノレだ」
お祭り仮面は仮面に手を当てて自信満々に言った。
「またそれかい。紛らわしいよ。類似品買ってどうするんだい」
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