買い物袋

2/5
前へ
/5ページ
次へ
   雨上がりの空は、いつも眩しい。  まだ頭の上に掲げていた黒い傘を、ゆっくりと下ろす。途端、水滴が何滴か、傘から落ちた。  僕は、俯いていた顔を上げた。  雲が、青空から逃げるかのように、風に吹かれて何処かに消えていく。 「あ、虹だ」  青空が僕の視界の中で澄み切った時。空に虹が架かった。 「虹が出来るところ、始めてみた」  その虹は、僕の視界を切るように架かっていた。珍しく途切れずに、半円型に、すっと。  思わず半開きになっていた口を閉じた。  僕はその虹に向かい歩きだした。別に虹に触れたくてとかじゃない。帰る向きがそっちだったから。  僕は徐に携帯電話をポケットから取り出した。 「――あ、もしもし。凪です」 「ん、表示されるからわかってる。んで、どうした?」  携帯電話を挟んだ向こう側で、面倒臭さそうに応答する声が聞こえる。 「ねぇ文隆。今日、泊まりにこない?」 「どうした、凪から誘うなんて珍しいな」 「いや、なんかね」  電話の向こうの彼にはわからないだろうけど、僕は少しだけ微笑んだ。 「勿論冬美も連れていって良いよな?」 「あぁ、大丈夫」  彼は彼女を連れて来ると言う。僕の大切な親友の一人だ。そして、今日僕がしたいことに必要なメンバーの一人。 「わかった。んじゃ今から晩飯でも買ってすぐそっち向かうよ」 「ありがとう。助かる」
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加