買い物袋

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 そう言って、僕は電話を切った。  携帯電話の画面から目の前に視線を戻すと、歩きながら電話をしていた為か、自分が一瞬何処に居るのかわからなくなった。  ふと、立ち止まり、目の前にあった水溜まりに映る空を見た。それは今僕の真上にある空と変わりはなかった。  コンクリートと言う器に溜められた雨も、広大な湖と変わらない。あそこに映る空だって、同じ空だ。今、架かっている虹さえ、鮮明に写す。  そんなものか。  そう思った。  僕はその水溜まりを飛び越え、また歩みを進めた。  この道は、人通りが極端に少ない。だから僕は好んで使う。学校に行くとき。買い物に行くとき。彼女を迎えに行くとき。現に、今も買い物帰りだ。 「そういや、晩飯なら買ってるな」  手元を見た。  良く見たら二人分しか買ってないし、まぁよかったのかもしれない。  水溜まりに注意して歩いていたら、いつの間にか家についた。小さな一軒家だ。  僕は右手でドアノブを握り、ゆっくりと捻った。するとドアを開ける隙もなく、中から足音が、忙しく聞こえる。  僕がドアを開けると、彼女が笑顔で立っていた。 「凪おかえり」 「ただいま、瑞香」  僕は彼女の軟らかな笑顔に迎えられ、家の中に入って行った。 「今日、文隆と冬美が泊まりに来るから」 「うん、さっき冬から電話来てて知ってるよ。何か夜ご飯買ってきてくれるみたいだから、一応なにかって来たら良いか材料教えといたよ」 「あぁ、ありがとう」  僕は台所に荷物を置き、リビングのソファーに座った。すると彼女も僕の隣に座ってきた。 「虹、凄いね」  ソファーに座ると、窓越しに虹が見えた。先程と変わらず、空を横に切っている。 「凪の事だから、あの虹見て、泊まりに誘ったんでしょ」
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