第壱章

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「2人共、早く戻れよぉ」 この、変に間延びした声は加藤先輩だ。 先輩はモテるはずの容姿なうえいい人なのだが、喋り方のお陰で彼女いない歴=年齢という記録更新中だ。 「すんませぇん」 「ふざけてないでさっさとしろぃ」 物真似をしたら頭を叩かれた。 「先輩、喋り方どうにかしたらどうっすか」 「余計なお世話だ」 「そんなんじゃモテないっすよ」 ナオトが隣から口をはさんだ。 「いいんだよぉ」 それから先輩は「大勢にモテなくて」と続けた。 「…好きな人、いるんですか」 加藤先輩は少し照れたように言った。 「いる」 俺が黙ると、先輩は恥ずかしくなったのか、もう一度俺の頭を叩いた。 「ほら、いくぞぉ」 加藤先輩とナオトが皆のもとへ歩いて行くのを見る。 そして俺は考える。 恋ってなんだ。
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