第壱章

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6時半、ブラックサンタの厳しい練習にも耐え、学校での1日が終わった。 各々、エナメルを肩に下げ帰り始めた。 「ヒロヤ」 振り向くとナオトがこちらに走ってきた。 「西沢、8組なんだってさ」 「…ああ、タオルの」 練習の間にすっかり忘れてしまっていた。 ナオトはちゃんと覚えていて、バスケ部の2年生に聞いてまわっていたようだ。 「8組の奴いなかったし、明日にでも渡しに行こうかと思ってんだけど」 「おう」 「…………」 ナオトはこちらをじっと見ている。 ……仕方がない。 「はいはい、ついてってやるよ」 「サンキュ」 見た目は人懐っこい雰囲気のナオトだが、実は人見知りだったりする。 話も聞いた訳だし、俺は明日ナオトについて行くことにした。 「帰ろうぜ」 エナメルを掴み、体育館から出た。 「じゃあな」 ナオトの家は高校より山の方にあって、校門から5分もすればナオトと別れる。 軽く手を振って、歩き出した。 家に帰る途中に、テニスコートがある。 これは敷地の広くないうちの高校のもので、高校と同じ敷地に作れなかったらしく、少し離れた場所にある。 何となしにそのテニスコートを見ると、今日は練習はないようで、夕陽に染まるコートに人影は見当たらなかった。 と、思ったら、コートの真ん中に何やら黒っぽいものが動くのが見えた。 目を凝らして見ると、女の子だった。
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