第壱章

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特徴的なスカートは、うちの制服だ。 緑のリボンは2年生の証。 黒い髪は短い。 「…………」 女の子はコートの真ん中に寝そべっていた。 知り合いかどうかはわからないが、同級生だし声をかけるか迷っていたら、その子がむくりと立ち上がった。 幸い、俺のいる場所と反対側を向いて立ち上がったのでこちらを見られることはなかったが、代わりに顔を見ることは出来なかった。 女の子は近くに置いてあった鞄を取った。 制服が砂まみれになっているのも気に留めずに、はたくこともしないで女の子は何処かへと歩き出した。 おそらく家へと帰る途中なんだろう。 そのままぼんやりと女の子を目で追っていたら、スカートから何か落ちるのが見えた。 女の子は既に曲がり角で見えなくなっていたので“何か”が何なのか確かめに行くことにした。 それはハンカチだった。 和柄のようなデザインのタオルハンカチ。 きっとスカートのポケットから落ちたのだ。 何気なく、そのハンカチの裏を見ると、名前が書いてあった。 8組 西沢 驚いた。 まさか、と思ったが、2年生で8組で女子で西沢。 間違いない。 あのタオルを落とした西沢だ。
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