26人が本棚に入れています
本棚に追加
(暗くて、寒い。)
(ここは…どこ?)
(?)
(牢屋…)
静かな部屋の中、やっと目が覚めた雛袖はしばらく黙っていたが、ようやく自分がおかれている状況を理解した。
縛られた手が何よりの証拠だった。
(監禁されたんだ…儀式に失敗したから…)
そんなことを考えてるときだった。
急に鉄格子が開いたのだ。
そして、入ってきたのが、父と母だった。
「…父上、ははう…!?」
パシンッ!
言い終わらぬうちに母が雛袖の頬を力いっぱい殴った。
思わず殴られた片頬を手で覆いながら見上げると、父が雛袖の胸ぐらを掴み、睨み付けながら言った。
「この、出来損ないが!私たちがなんのためにお前を育てたと思ってるんだ!全く、こんなにできの悪い娘だとは思わなかったよ!正直幻滅したよお前には。」
目を、疑った。
仮にも、実の娘にこんな暴言を吐き、殴りつける親がどの世界にいるだろう。
「お前、この儀式が失敗したからには、なにが起こるかわかっているな?せいぜい、覚悟しておきなさい。3日3晩、死よりも恐ろしい恐怖を味わうことになるだろうからな」
両親が出ていった後、雛袖は壁に寄りかかって考えた。
--死よりも恐ろしい恐怖…。
規定の年齢にさしかかったときに、一度読まされたことがある。
天ケ瀬家のしきたり。
今日のこの儀式は、御家がいつまでも末永く盛んでいられるように、というまじないのようなものだ。
しかし家の人間はその儀式を真面目に行う。
いつまでこんな儀式を続けるのか、しかし、この儀式にはなにか他に理由があるような気がしていた。
そして、私が受ける罰も書いてあったとふと思い出す。
儀式に失敗した者は、3日3晩の、親族からの虐待を請けることになる--。
最初のコメントを投稿しよう!