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「夜遅くにゴメンね」
ションボリとすまなそうにする男に彼女はため息をついた
「悪いと思ってんだったら訪ねてこないでほしいんだけど?」
最近お気に入りの作家さんの薄い本を片手に、自分の住居へ男を招き入れた
モノトーンかつ無機質な部屋にあるのは、パソコンとベッド、長方形のテーブル、そして巨大な本棚に詰められた目に毒な、そういう本達
ワンルームのその部屋は散らかってはいないけれど、女性が住んでいるとは思えないほど色が少ない
巨大な本棚は扉付きなので閉めてしまえば中身の様々な毒々しいまでの本は見えないのだ
「で、本題は何?大事な読書タイムを削ってまで聞かなきゃいけない内容なんだろうね?」
コーヒーを2つ持って、テーブルに並べてある一対の座椅子に座らせて待たせている男の対面に座り、彼女は口を開いた
「あ、あのね…取れなくなっちゃったの」
「は?何が?」
もじもじと顔を赤らめる男はそこそこ顔の造形が整っていて、傍目からは恥じらう少女のように可愛らしいだろう
彼女に言わせれば20をとうに越えた身内の男がやっても萌えないらしいが
そんな彼女は未だにもじもじと言うか言うまいかを悩んでいる男に冷たい視線を送っている
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