episode.01

14/26
前へ
/2000ページ
次へ
「間もなく、添木ノ中央駅。添木ノ中央駅。お出口は左側です…。」 電車内のアナウンスが鳴る…。 ちえみとの会話に夢中になり、あっと言う間に高校へ行く為の下車駅に着いてしまったようだ。 「もう添木ノかぁ…。なんかあっと言う間だったねぇ。」 ちえみが残念そうな表情で俺に言う。 「帰り、また連絡する。一緒に帰ろうぜ。」 俺がちえみにそう言うと、ちえみが申し訳なさそうにこう返してきた。 「ごっごめん!トージくん!今日ね、お父さんとお母さんが入学祝いをしてくれるって言っててね…断ったんだけど…。だから、今日は別々になっちゃうんだ…。ごめんね。」 俺はその言葉を聞いてすかさずこう返す。 「そ、そうか。じゃあ……!」 俺がそう言った瞬間に電車の乗り降り口の自動ドアが開き、駅に着いた事を知らせる。 「トージくん。また「明日」ね。」 ちえみが優しい笑みで手を振りながら俺にそう言った。 俺は電車を降りながら、ちえみに言葉を返す。 「あぁ。また『明日』。」 その時の俺はまだその『明日』が訪れる事がないとは知る由もなかった。 .
/2000ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8024人が本棚に入れています
本棚に追加