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「間もなく、添木ノ中央駅。添木ノ中央駅。お出口は左側です…。」
電車内のアナウンスが鳴る…。
ちえみとの会話に夢中になり、あっと言う間に高校へ行く為の下車駅に着いてしまったようだ。
「もう添木ノかぁ…。なんかあっと言う間だったねぇ。」
ちえみが残念そうな表情で俺に言う。
「帰り、また連絡する。一緒に帰ろうぜ。」
俺がちえみにそう言うと、ちえみが申し訳なさそうにこう返してきた。
「ごっごめん!トージくん!今日ね、お父さんとお母さんが入学祝いをしてくれるって言っててね…断ったんだけど…。だから、今日は別々になっちゃうんだ…。ごめんね。」
俺はその言葉を聞いてすかさずこう返す。
「そ、そうか。じゃあ……!」
俺がそう言った瞬間に電車の乗り降り口の自動ドアが開き、駅に着いた事を知らせる。
「トージくん。また「明日」ね。」
ちえみが優しい笑みで手を振りながら俺にそう言った。
俺は電車を降りながら、ちえみに言葉を返す。
「あぁ。また『明日』。」
その時の俺はまだその『明日』が訪れる事がないとは知る由もなかった。
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