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◆◇◆◇
翌日、早苗は眠い目を擦り一階のリビングへと降りた。
すると母が父と親密に話し込んでいるのが開いているドアの隙間から見える。
そっと隙間から覗き聞き耳を立てた。
両親が話している内容は早苗には直ぐに解った。
「渚ちゃんのお母さんから今朝電話があったんだけど…渚ちゃん行方不明で今警察に話したって。」
「あの早苗といつも一緒に帰ってくれる偉い子か?何でまた…。あの子は家出するような子じゃないしな…。」
両親が話している内容を聞いてしまった早苗は恐怖で身体が奮えた。
―昨夜、渚からのメールがぷっつり途絶えた後、渚は連れていかれたのではないか?
そう思うと恐くて仕方なかった。
―渚は大丈夫なのか?
―渚は何故連れていかれたのか?
―渚は今何処にいるのか?
そんな考えが早苗の脳裏に過ぎる。
そっとリビングに入ると両親は早苗の方を見て笑いかける。
「あら?もう起きたの?早いわね。今、朝ご飯作るから座ってなさい。美味しいご飯作らなくちゃね!」
「おはよう早苗。母さん!俺に珈琲よろしく」
「はいはい♪」
両親は何事もなかったかの様に接してくれるが、早苗には話し掛けてくれる言葉すら頭に入ってこなかった。
早苗はほぼ放心状態のまま学校へと向かった。
◆◇◆◇
学校に着いたが、渚は案の定来てはいない。
―やはり連れ去られたのか?
早苗は自分の不甲斐なさに涙が出た。
あんなに"恐い"と言って自身を頼ってくれた親友を助けられなかったと思うと、自分が情けなく思えたのだ。
「渚ちゃん、行方不明やって…もしかしたら連れていかれたんとちゃう?」
「そうかもしれへんな…早苗ちゃん可哀相に。一番仲良かったのにな」
そう教室の隅の方で話している生徒達の話も早苗には聞こえなかった。
すると、ある男子の言った言葉が早苗の耳を入ってきた。
「じゃあ、"鬼神の鬼薊"に頼べば良いんとちゃうか?助けてくれるかもしれんし…」
その話を聞き、早苗は話をしていた男子に近付く。
「ねぇ!"鬼神の鬼薊"呼ぶのってどうしたらいいん?」
早苗がいきなり話し掛けたため男子は一瞬目を見開き固まったが、直ぐに早苗の問いに答えた。
「ええか?"鬼神の鬼薊"を呼び出すには"鬼神の鬼薊よ天命に有り"って三度言うんや!そしたら来てくれるで。」
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