-百物語 雪女- 

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 早苗は一度頷き、何度も"鬼神の鬼薊"を呼び出す言葉を忘れぬ様に呟く。  すると先程の言葉に付け加える様に男子が言う。 「でも、"鬼神の鬼薊"は依頼が終えた後、その依頼におうた"代償"を取っていくんや。その"代償"は人それぞれ。"鬼神の鬼薊"に頼むのやったら考えてからにしいや?」  早苗は男子の言葉を最後まで聞くと席に戻った。  早苗の心には一切の迷いは無かった。 ◆◇◆◇  刻一刻と下校の時間が迫る。 <キーンコーンカーンコーン♪キーンコーンカーンコーン♪…>  チャイムが鳴り生徒達が一斉に帰り出すなか、早苗だけは教室に残り渚の机を眺めていた。  希望は持っていた。  渚が行方不明なのは嘘で、遅刻して学校に来るのではないかと。  だが最終的に渚は学校には来なかった。  早苗は数分経つと鞄を持ち学校を後にした。 ◆◇◆◇  丁度、渚と帰っている時に寒気を感じた道で立ち止まる。  薄々早苗は気付いていた。  昨日、プラットホームで見た銀髪の人が犯人ではないかと…。  早苗は不意に寒気がした。  数秒程経つと早苗の後ろで音が鳴る。  渚のメールにあった"ピチョピチョ"という音。  早苗は後ろを振り向かず、その場であの言葉を唱えた。 「"鬼神の鬼薊よ天命に有り"、"鬼神の鬼薊よ天命に有り"、"鬼神の鬼薊よ天命に有り"」  すると突如風が舞い上がり強風が吹き付ける。  早苗はあまりの強風に目を閉じた。  風も納まり早苗は閉じていた目をそっと開ける。  早苗は驚きで目を見開いた。  何と早苗の目の前には先程の場所と全く違う景色が広がっているからである。  彼岸桜と彼岸花で覆われた花園は何処までも続いている。  その中で早苗はポツンと一人立たずんでいた。 「何や?此処…」  すると返りもしない返答が早苗の後ろからした。 「貴方が呼んだのよ…私を。」  びっくりして早苗は声のした方へと体を向ける。  そこには自分より少しだけ年下の様な容姿をしたセーラー服の少女が立っているではないか。  早苗は目を見開き固まったが直ぐにその少女が誰か解った。 「あんたが"鬼神の鬼薊"…」  二人は見つめ合い暫く刻が流れた。
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