-百物語 雪女- 

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「そう、私が鬼薊…"鬼神の鬼薊"よ。鬼薊 珱。」 「"鬼薊 珱"?」  どうやら"鬼薊 珱"と言うのが名前らしい。 「なぁ、うちの親友を助けてほしいねん!何でも払う!"代償"ならいくらでも!せやから渚だけは助けてほしいんや!」  そう"鬼神の鬼薊"に頼む早苗。  珱は暫く無言でじっと早苗を見ていた。  すると早苗に向かってこう言い残した。 「私が貴方を助ける代わり、"代償"がいることを忘れないでね。…"我、鬼神なり。汝の願い聴き賜らん"」  そう言うとまた強風が吹いた。  早苗は目を閉じ強風が止むのを待つ。  暫くすると強風が止み、いつの間にか元いた所に戻っていた。  そこには"鬼神の鬼薊"の姿も花園の姿も無かった。 ◆◇◆◇ 「何やったんやろ。ほんまに聞いてくれたんかいな」  自身のベッドの上で両足をばたつかせ携帯を弄っていた。  すると両親が寝ているにも関わらず、廊下の方から音がするではないか。 <ピチョピチョ…>  早苗は恐くなりベッドに潜り込んだ。  暫くすると音は早苗の部屋の前で止まった。  早苗はベッドの中で小刻みに奮えていた。  すると部屋の扉がすっと開く。 <ピチョピチョピチョ…>  自分が寝ているベッドの真横で音が聞こえる。 ―もうダメだ!  そう思った瞬間窓から入る強風でカーテンが音を発てて靡く。  すると早苗に聞き覚えのある声が聞こえた。 「やっと姿を現したわね。"雪女"」  今日の帰りに聞いた声だ。  忘れるはずがない。  この声は…  『鬼神の鬼薊』  "鬼薊 珱"の声。
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