プロローグ

4/6
21185人が本棚に入れています
本棚に追加
/458ページ
. 「まあ…地方の大学だけれどね。」 何とか浪人生活を免れて、地方の大学に合格した私。 親を含めた周囲のみんなからは、奇跡だと崇められ続けた。 昔から、運は強い方だと言われていたけれど、少しは私の実力を褒め称えて欲しいところだ。 「そうだ……新居の進路は?」 確か、新居って……頭良かったよね。 授業中に当てられた問題の答え、後ろの席からよく教えてくれたし。 「俺は…芸大。」 「へえ、凄いじゃん。」 私は尊敬の眼差しで彼を見た。 芸大ってだけで凄いと思うのは、夢があるって感じがするから。 とりあえず自分の入れそうな大学を選んで受験した私とは違って、目の前のこの人は、自分の将来をきちんと見据えている。 「私なんて、先のことは全然考えていないよ。」 「……そんなもんなんじゃない?」 やけに落ちついた新居の声が、私の耳に届く。 「だって例えば30になった時の自分なんて、想像つく?」 「……全く。」 子供の頃、高校生の世界はもっと「大人」なんだと思っていた。 .
/458ページ

最初のコメントを投稿しよう!