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プロローグ
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暖かい春の日差しを感じた2月の終わり。
私は高校の卒業式を迎えていた。
「出席番号1番、会津紗智。」
「はい。」
意気揚々と返事をすると、通り過ぎざまに顔見知りの友人たちに声を掛けられる。
「サチコ、途中でこけるなよー。」
「こけたら、ネタだぞ。」
その声に対して、私は笑顔でピースサインをして応える。
今から出席番号1番の私は、クラスの代表として舞台の上に立つ。
予行練習で何度も指導されたので、この雰囲気も慣れたものだ。
練習通りに壇上で、数えるほどしか見たことの無い校長先生と会釈を交わし、私は卒業証書を受け取った。
そしてそのまま私は、階段を下りて席に戻る。
あまりに普通に終えてしまったので、友人たちは少しつまらなそうな顔をしていた。
それもそれで、失礼な話なのだが。
椅子に座ると、隣に座っていた出席番号2番の新居が話しかけてきた。
「大役、お疲れさん。」
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