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「兄さんのクラスは出し物決めたんですか?」
背筋をピンと伸ばした由夢は笑顔でそう訊く。
ったく、猫被りやがって。
普段はジャージ姿でだらだらしながら、『兄さんおなかへったー』とか言ってるくせに。
まぁ由夢は学校じゃファンクラブできるほど人気だからな。
そんな姿を公衆の面前にさらすわけにはいかないな。
「兄さん!もう、今よからぬこと考えてたでしょ」
「ギクッ」
お前はエスパーか、由夢。
「何でもないよ。で、何の話だっけ?」
「はぁ、ちゃんと人の話聞いててください。兄さんのクラスは出し物決めたんですかって訊いたんです」
「んー、決まってないみたいだぞ」
俺は大きな欠伸をしながらそう答えた。
我がクラスは団結力のなさなら学園一であること間違いない。
「そうなんですか?」
「まぁ、何だっていいさ」
「お姉ちゃんにあまり迷惑かけないでくださいね」
「わかってるよ……」
「杉並先輩や板橋先輩に便乗したりしないでくださいね」
「へいへい」
由夢は何か問題があると俺を犯人にしたがる。
俺ほど品行方正な生徒は他にいないのになぁ。
俺は由夢を心の中で恨みつつ、足早に学校へと向かった。
「あっ、歩くの速いよ!待ってよ兄さん!」
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