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「お、由夢、義之兄」
桜並木を歩いていると、見知った顔が声をかけてきた。
「おはよう、実くん」
「おっす」
このいかにも『普通』って感じの男の子は、藤堂実(とうどうみのる)。由夢とは幼なじみで、俺も弟のように可愛がっている。
「音姫姉は?」
「生徒会の仕事があるって、先に学校行ったよ」
「ま、もうすぐクリパだしな……」
クリパというのはクリスマスパーティーのことで、風見学園の行事の一つだ。
クリスマスシーズンの文化祭、と言えば伝わるだろう。
「で、義之兄。今回はどんなことやらかすの?」
実はニヤリと笑い訊いてくる。
非常に心外だ。
「何もしないぞ。お前こそ何企んでるんだよ」
「なーんにも。杉並さんや渉さん、亮さんは何かしでかすかなぁと思ってね」
実は再びニヤリと笑う。
こいつも問題児だな……。
「はぁ………」
隣では由夢が呆れたように頭を項垂れていた。
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