―日常―

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************ ぐぅぅー 怪物でも潜んでいるのではないかというくらい、俺の腹は激しい音を立てて鳴った。 「わお、義之くんてばすごい大きい!」 「勘違いするようなセリフはやめましょう」 俺の前の席の、花咲茜は怪しげな笑みを見せる。 「ちょっと、茜ぇ~……。他にも人いるんだから……」 そう言っておどおどする俺の幼なじみ・月島小恋。 「あら、小恋は一体何を想像してたのかしら……」 そんな小恋をからかうように呟く雪村杏。 この三人は仲が非常に良く、周囲からはその見目麗しい姿から『雪月花三人組』と呼ばれていたりする。 「ねぇ、小恋ちゃーん?何を想像してたのー?」 「うぅー、言わないもん」 いつも通り、小恋いじりが始まる。 隣では渉がヨダレを垂らしながらその光景を眺めていた。 「あぁー、俺も月島をいじりてぇー!」 バシッ! 途端、渉の頭には強烈なチョップが炸裂した。 「渉、死刑」 「ぐ、ぐぉぉ……」 渉にチョップをお見舞いしたのは、同じクラスメイトの風越悠(かぜこしはるか)。 非常に男勝りなのだが、それ故か男子より女子に人気がある。 「さぁ義之、亮。渉なんか放っといて、飯食おうぜ」 とまぁこのように、男子は名前で呼び、 「雪村、花咲、月島、お前らも早く」 女子は名字で呼ぶという、世間的に常識はずれなやつなのだ。 「悠、容赦ないな」 「普段の振る舞いを考えたら、これくらい当たり前だ」 全くその通りでございます。 俺と亮は渉に同情せず、弁当へと手を付けた。
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