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「………で、これからどうするよ。メイトリクス。」
金髪の青年にメイトリクスと呼ばれたを黒いフードを着た少年は青年の目を見た。その瞳は鮮烈な赤色で何事にも屈しない豪壮な意志を備えていた。
「故郷に帰るよ。もう何年も帰って無いしね。クラエス、あんたはどうするんだ」
「どうもこうもここに残るしかねぇよ。奴を殺した責任が………いやそうじゃねぇな。とにかく俺はこの『界』に残る。」
クラエスの答えにメイトリクスは堂目した。 ありとあらゆるものが紫色に彩られセカイから拒絶されたもの達が集まる世界、『紫幻界』。ここに残ると言っているのだ彼にとって有一無二の親友は。
しかし、
「わかった」
納得出来てしまう。彼がこんな場所に残るに値する理由を薄々分かっている。だからこそ……
「なら、ここでお別れだな。もう会うことも無いだろう」
メイトリクスは身を翻し歩き出した。
「ああ、じゃあな。………それと、俺がここに残ることはアイツ等には秘密にしといてくれや。ヒメレの嬢ちゃんやラヴァン先生やらが、連れ戻しに来るのは勘弁だからよ」
返事を返さない。
アデア=メイトリクス=フロウはただ足を進めた。
重力が狂っている不可思議な街を。
幽鬼たちが闊歩する不気味な墓場を。
龍神が住まう厳格な山脈を。
全てが歪な世界を歩き続けた。
―――そして、たどり着いた。
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