一章 帰郷そして邂逅

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 年齢不詳メイドの変わらない姿と仕草を思い出して黒髪の少年は小さく笑った。  厳しさと優しさを内包した稚気をまるで感じさせない瞳と体全体を覆う黒いフードは十五の少年ながら、見るものを熟練した賢者ように錯覚させる。  ファウデリア国の山岳地帯にあるフロウ家の別館の中、べアデア=メイトリクス=フロウはソファーに座り、何も変わってないなと懐かしむように部屋を見ていた。  そこに 「久しぶりだな、アデア」 アデアは応えた。 「………ああ、久しぶりだマキナ兄さん」  隣にいたアリシアにギャナツェンは下がれと視線を送ると露骨に嫌な顔をした。しかし、彼が睨むとそそくさと退散して行った。 「相変わらずだなアリシアさんも」 「たった五年で人はそうは変わらん。まぁ、奴は変わる変わらない以前に落ち着けと言いたいところだがな」 表情を緩めた兄をアデアは改めて見た。後ろで縛った長髪の黒髪、他人を威圧する鋭い目とそれに見合った筋肉質な巨体。そして、相変わらず場違いの軍服を着ている。 「変わらないな兄さんも」 「そうか?しかし、お前言うならそうなんだろうな。だがな、お前は変わったよアデア」 ギャナツェンは目を細めた。
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