始まり

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そんなとき、後ろの子が私の背中をつついてきた。 あ、男子だ。 そう思っていたら 「ねえ、君って山本なにさん?」 と聞いてきた。 きれいな声。 陽兄ちゃんの声に似てるなぁ。 それで少し安心して、 「梓…だけど」と言うと 「そっか!梓ね、よろしく。 僕は山本孝(やまもとたかし)だよ。 同じ名字だから、下の名前で呼んでくれると助かる」 と返ってきた。 フレンドリーな人だなぁと思いながら 「…あ、うん! 分かった、よろしく」 とかろうじて返す。 孝くんはなおも話しかけてきた。 「うん。 あ、呼び捨て大丈夫?」 「もちろんだよ」 「ありがと! 僕、同じ中学の奴とクラス違ってさ。 ちょっと不安だったんだ」 「そうなんだ?たしかにそれは不安だよね! ってもう着いた... 体育館おっきくない?」 「ほんとだ。めっちゃでかい! 中学の体育館とは比べものになんないな てか僕さ、道覚えてないんだけど!」 「私も…」 すると、今まで黙々と歩いていた山下くんが振り向いて、 「俺は覚えてるから各自で帰れって言われたら、付いてきていいよ」 と言ってくれた。 なんだ、山下くんっていい人じゃない。 それを聞いた孝くんは、山下くんに大げさなほどお礼を言っていた。 よっぽど帰路が心配だったのだろう。 私もそうだったけれど。 そうしてるうちに静かにするようにと言われ、扉の向こうが一瞬ガヤガヤしたあと静かになった。 ああ、もう入場するの? 緊張で倒れそうだよ😱 心なしかみんなの顔も緊張している。 ああ、みんな同じか。よかった。 私だけじゃなくて。
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