ある女のお話

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音もなく白い花が舞い降りる光景はとても綺麗でした。 日本では結晶の形から『六花(りっか)』と呼ばれているんですよ? 「綺麗だね、英香」 『本当に……』 今でも鮮明に思いだせます。 プロポーズをしてくれた定勝さんの言葉や顔、触れたぬくもり。 全ては夢ではない過去の真実。 『寒くない?』 「大丈夫だよ」 そうやって微笑んでくれた顔はあれからだいぶ老けていて落ち着きが滲みでていました。 『ありがとう。定勝さん』 お礼を言うと、照れた可愛らしい笑みをくれました。 昔と変わらない笑みを。
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