ある女のお話

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あれから何年も経ちました。 定勝さんは定年を迎えて、長くいられるようになりました。 素敵なロマンスグレーのおじいさまになったんですよ?定勝さん。 でも、視力はかなり悪くなってしまって眼鏡越しに輪郭を見るととんでもなくぐにゃりと歪んでしまうほど。 『大丈夫?』 「え?何がだい?」 『眼鏡よ』 そう言えば目尻に刻まれたしわを深くして笑ったの。 「英香が見えない方が、困ってしまうよ」 『まぁ』 嬉しくて頬が真っ赤になってしまいそう。 それに定勝さんが笑うから本当に困ってしまうわ。
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