夏の思い出

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4 それから数年経った今でも、私は毎年夏になると、この秘密の広場に来て絵を描くことが決まりになっていた。 この場所で起きたあの、奇跡の様な不思議な出会いにまた期待しているのかも知れない。 私は結局、絵描きという自分の進むレールは作れなかった。父やおじいちゃんの作った様な見事なレールを作ることは出来なかったのだ。 才能も無かったのかもしれない。 高校を卒業してそのまま漁師になった私は、それでも最後の抵抗とばかりに趣味という道を作り、今でも絵を描いている。 決められた進路を自ら変えて進んだ彼女と、決められた進路を変えられづに進んだ私。 また会える時が来たら、あの子はなんというだろう。 私はスケッチブックの何も描いていないページを開くと、空の青と白い雲を書き始めた。 fin
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