夏の思い出

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3 自転車で行ける所まで行き、獣道をしばらく歩くとその場所へと到着する。 僕はいつもの様に広場へ足を踏み入れた。 だが、そこにはすでに先客が居た。 それは一人の女の子で、身長は僕と同じくらい、真っ白なワンピースを着て、白く長い髪をなびかせていた。 その後ろ姿を見たときは、そこに雲が浮かんでいるのかと思った程だった。 その時突然、一陣の風が僕を包み込んだ。 目を閉じた僕がもう一度目を開けたとき、女の子は体をこちらに向けて僕を見ていた。 その瞳は、まさに空の様に青い色をしていた。 予想外の見知らぬ美少女の出現に驚いた僕は「はじめまして。君、転校生?」と間抜けな質問が口からこぼれた。 「転校生?」その女の子は、言葉の意味が分からない様な口調でその言葉を繰り返した。 外国の子なのだろうか。 この女の子はいったい……? そんな疑問に頭が満たされ立ちすくんでいる僕に向かって、その子は笑顔を返してきた。 そして僕は、完全にその笑顔に魅了されてしまった。
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