夏の思い出

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それから数時間、二人はこの小さな広場に座り、ずーっと話を続けた。 とはいえ、その殆どが僕からの質問で女の子はそれにカタコトの日本語で返すというものだった。 しかし話が噛み合わず、ただ笑顔で返す事も多かったが、僕はその笑顔を見れるだけで嬉しかった。 楽しい時間はすぐ終わるとはよくいったもので、気が付くと辺りは夕暮れに包まれていた。 僕たちは慌てて帰ることになり、翌日に絵のモデルをしてくれと約束を交わした後、帰り道が違うという彼女とはここで別れ、僕は来た道を帰って行った。 家に着いた僕は、母に散々文句を言われた後に用意された夕食をテレビを見ながら食べていた。 それを見ていた母が「孝司、明日は父さんの手伝いをしなさいよ」と声を掛けてきた。 「えっ、だめだよ。明日ははずせない用事があるんだから」 「どうせ絵でしょう。今日行ったんだから、明日は手伝いなさいよ」 「駄目だって。今日は描けなかったんだ……とにかく明日は絶対駄目だからね」 強くなった僕の口調に母はため息をつくと「まったく」とこぼし、その後は手伝いについてはもう言わなくなり、そのまま視線をテレビへと向けた。 テレビでは丁度、台風のニュースを伝えていた。 どうやら今回の台風は珍しい形で、大きな台風の横に小さな台風が寄り添っている、まるで親子のようなものだった。 テレビの予報ではやはりあと数日で、この町にも最接近すると伝えていた。
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