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キン、と高い音が空に響く。
青空に浮かぶ剣の銀が、太陽に反射して白く輝いた。
「だあああっ! くそ、また負けた!」
下級兵が使う兵舎の食堂は、休憩中の兵士の賑わう声で覆われていた。一つの机を中心に円を描く兵士達は、笑い声をあげて机の前の青年の背を叩く。
「次があるだろリオ!」
「たかが五連敗で腐るなよ!」
リオ、と呼ばれた黒髪の青年は、恨めしそうに自分の背を叩いた兵士を見上げた。
「お前ら、面白がってるだろ……」
「そんなばかな」
「顔が笑ってんだよ! アクト、もう一回だ!」
一音一音区切りながら言い返す様に吹き出す声がいくつも続く。口元をひきつらせながらリオは正面を向いて手を突きだした。
リオの向かいに座るアクトは、困ったように眉を下げながら、けれども面白そうに笑ってその手を握る。
「レディー、ゴー!」
兵士の一人の開始の合図を聞いて。
「えい」
軽いかけ声と共にリオの右腕は机の上に倒された。
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