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アクトは目の前であからさまに拗ねるリオをどうとりなすか考えていた。いくら遊びだからと言って、六回連続で負けた相手の言葉を素直に聞くかという懸念もある。
しかしたかが腕相撲で、と思わなくもない。
どうしたものかとアクトは柔らかい茶髪をかき上げた。
薄い青の瞳を細めて眉を下げる。頬に散らばるそばかすも相まって、普段から柔らかい印象を与えるアクトのその表情は、見たものが思わず同情してしまうほど困っているように見えた。
実際本人はそれほど真剣に考えていないのだが。
二つ年下のこの友人が負けず嫌いなのは今にはじまったことじゃない。こうして拗ねるリオを相手にするのにも慣れている。何か他に彼が興味を示すものを提示すればいい。
問題は自分が原因だと言うことと、その何かが思いつかないことである。
口元に手を当てて首を傾げたアクトは、ややあって、あ、と声を漏らした。
「そういえばリオ、明日の訓練はジルバ様がいらっしゃるそうだよ」
ぽつりと落とした言葉に反応して、リオはアクトを見た。
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