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「ジルバ様が?」
ぱちりと瞬いたリオの瞳はもう輝いている。
わかりやすく喜んでいる姿にアクトは思わず吹き出した。
「なに笑ってんだよ」
「いや、ジルバ様の話を出すとお前の顔も怖くないなと思って」
「意味分かんねえよ。顔が怖いってつり目のことか!生まれつきだ!」
右目を指さしながら必死に返すリオに更なる笑いがこみ上げる。
眦に涙が浮かぶほどに笑ったアクトは、顔の前で手を振ってリオの言葉を否定した。
「そういう意味じゃなくて、不機嫌な顔じゃなくなったってことだよ」
く、と喉の奥で笑いを噛み消すアクトをリオは不満げに見る。
「……で、ジルバ様が来るって本当なのか?」
リオはしばらく眉間にしわを寄せていたが、これ以上抗議したところで笑われるだけだと思ったのか、単にジルバのことが気になったのか、紫の瞳で返事を促した。アクトはああ、とさも今思い出したように手を打ってリオの顔の前で指を立てた。
「本当さ。明日、訓練を見てくださるらしい。手合わせもしていただけるかもしれないよ」
言えば、面白いくらいに笑顔になったリオがアクトの腕を掴んだ。そのまま引っ張られるままに走る。
ぐいぐいと引かれる先は訓練場へ向かうもので、わかりやすい友人にアクトは小さく笑みをこぼした。
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