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訓練場につくと、驚くべき早さで準備を終えたリオに剣を渡された。渡すと言っても手渡しではなく軽く投げられたため、アクトは慌てて受け止めた。
抜き身だったらどうするんだ、と心の中で文句を言いながらも鞘から剣を抜く。
リオの前で構えて、同じように構えた彼に笑いかけた。
「嬉しそうだね」
「あったりまえだろ! 俺はいつかあの人を越えるのが目標なんだ。そのチャンスがこんなに早く来るなんてな!」
「……うん?」
金属を打ち合う音が断続的に響く中で、アクトは首を傾げる。右から打ち込まれた剣を受け止めてちょっと待ったとリオに手のひらを向けた。
攻め込もうと思っていたらしいリオは、肩すかしをくらったようになんとも言えない表情を浮かべている。
リオは早くしろとでも言うように再び剣を構えているが、そうもいかない。聞き捨てならない言葉が聞こえた。
「明日? チャンスが?」
「そうだよ。それがどうしたんだ」
「……なんの?」
「だから、ジルバ様を越えるチャンス!」
冗談だろうと思ったが、向けられる目は至って真剣で。
アクトは眉を下げて苦笑した。
「さすがに明日は無理なんじゃないかなあ」
「俺だって勝てるとは思ってないけどさ、一歩近づくことはできるだろ。だからチャンスなんだ、よっ」
「うわっ」
真っ直ぐに振り下ろされた剣を受けてリオを見れば、勝ち気な瞳が笑っていた。
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