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ベッドにいつもより一回り小さな膨らみ、定位置で眠る上田の頬には涙のあとがあって。
気づかないフリして隣に潜り込めば、無意識と言っていいほどいつも通りにくっついてきた。
背中に腕を回して引き寄せて、そっと唇寄せれば大きな瞳が俺を捉えて。
「なかまる」
脳に響く低音ボイス、胸の奥がきゅう、っとなった。
「寝ろよ、」
「ん、あのさ」
「なに、」
「なかまるは…」
またもや中途半端に躊躇われた言葉に、なんかもうすっげーイライラして、モヤモヤして。
「んだよ、言いかけてやめんなって」
「ごめ、」
「あーもう、泣くなよ、まじうぜー」
「っ、」
俺の方が子どもかってくらいの八つ当たりをした。
「…きらい?」
「あ?」
「小さくなったおれは、もうきらいな、の…?」
「っ、」
泣くのを必死に我慢して、顔を見られまいと胸板に潜り込むんだけど。
じわじわと広がる涙の染みが、熱いほど胸に焼きついた。
「ごめ、嫌いとかじゃなく、て」
いままでの態度ではなにを言っても無駄だろうけど。
忘れていた大事なことは小さくなった上田だろうと関係なくて。
「好きです、大好きです。酷い態度とってごめんなさい」
回した手に力を込めた。
「おれ、だって、ふあん、で」
「うん、」
「なかまる、が、だいじょうぶだよ、って言ってくれる、だけで」
「うん、」
「あんしんできたんだよ」
「ん、ごめん」
本当のところ、一番不安なのは上田本人で。
解決策もないまま過ごすのは心細いわけで。
そんなときに俺はなにをやってたかと聞かれれば、答えられないようなことをしたわけで。
「ほんとごめん、大丈夫、きっと元に戻れるから。俺が責任持って元に戻る方法調べるから」
言った言葉に、上田は小さく笑い声を漏らして。
「せきにんもってめんどうみてくれる?」
「っ、もちろん!」
かわいい笑顔で見上げた上田に、深い、深い、口づけを落とした。
(ね、シよっか)
(お前カラダ小さくなってんの!意味分かってる?)
(うん、だからおれがいれるから)
(ば、ふざけんな!!!)
next...?
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