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「私ね、それでも良いのかなって思ったんだ。翼ちゃんが悩んで、それで選んだ答えならって」
そうだ。翼だって、好きで俺たちと縁を切ろうだなんて考えてる訳じゃない。アイツだって悩んだはずなんだ。だけどその答えが、こんなものだなんて……。
「でも、こんな一方的な別れ方なんて嫌!翼ちゃんと蟠(わだかま)りを残したまま離れるなんて!」
そう悲痛に叫ぶ天音の瞳は、確かな力強さを宿していた。
「だから大神くん、お願い……。翼ちゃんと納得してから別れたいの!だから、協力して……」
「俺は元々そのつもりで天音に声を掛けたんだ。それで断ったら意味がないさ」
「ありがとう……」
何とか、天音と協力関係を結ぶ事は出来た。問題はこれから翼にどうやってアクションを仕掛けるか。昨日あれだけ喧嘩っぽくなって別れた手前、フランクにとは行き難い。
「それで、どうする?翼は多分、俺たちと話をする気も無いんだろうし……。」
「それなら、私にちょっと考えがあるの。だから、昼休みにでも話し合いましょう?」
ナイスだ、天音。どうやら彼女には妙案があるらしい。自信がある声だ。そうでなくても聞かなければ、始まらないだろう。ここは彼女の考えとやらに乗っかってみたい。
「分かった。それじゃあ、昼休みだな」
俺はそう言って拳を天音に突き出した。
「何よ。喧嘩売ってる?」
「これからよろしくって意味で」
これは昔、翼と良くやっていた仲間の証みたいなものだ。何かといがみ合った後には、必ずこれをやって仲直りをしていた。
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