9月3日‐始めの一歩‐

3/9

1人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
「私ね、それでも良いのかなって思ったんだ。翼ちゃんが悩んで、それで選んだ答えならって」  そうだ。翼だって、好きで俺たちと縁を切ろうだなんて考えてる訳じゃない。アイツだって悩んだはずなんだ。だけどその答えが、こんなものだなんて……。 「でも、こんな一方的な別れ方なんて嫌!翼ちゃんと蟠(わだかま)りを残したまま離れるなんて!」  そう悲痛に叫ぶ天音の瞳は、確かな力強さを宿していた。 「だから大神くん、お願い……。翼ちゃんと納得してから別れたいの!だから、協力して……」 「俺は元々そのつもりで天音に声を掛けたんだ。それで断ったら意味がないさ」 「ありがとう……」  何とか、天音と協力関係を結ぶ事は出来た。問題はこれから翼にどうやってアクションを仕掛けるか。昨日あれだけ喧嘩っぽくなって別れた手前、フランクにとは行き難い。 「それで、どうする?翼は多分、俺たちと話をする気も無いんだろうし……。」 「それなら、私にちょっと考えがあるの。だから、昼休みにでも話し合いましょう?」  ナイスだ、天音。どうやら彼女には妙案があるらしい。自信がある声だ。そうでなくても聞かなければ、始まらないだろう。ここは彼女の考えとやらに乗っかってみたい。 「分かった。それじゃあ、昼休みだな」  俺はそう言って拳を天音に突き出した。 「何よ。喧嘩売ってる?」 「これからよろしくって意味で」  これは昔、翼と良くやっていた仲間の証みたいなものだ。何かといがみ合った後には、必ずこれをやって仲直りをしていた。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加