序章

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お姫様を手に入れようとする悪者たちは、互いに争いを起こしていました。 けれど、お姫様が塔に上ってからは、悪者たちも手に入れるのを諦め、争いは起こらなくなっていました。 お姫様が、いなくなったから。 「姫は何も悪い事はしていない。なのにこの仕打ち。きっととても哀しんでおられることでしょう」 男の言葉に、人々はお姫様の孤独を思い知らされました。 そして、争いを止めさせるためにお姫様を閉じ込めてしまった、自分達の我欲にも気付きました。 人々はお姫様に謝りたいと思いました。 けれど塔は高すぎて、誰にも上ることは出来ないのです。 すると男は言いました。 「私が姫のところまで行きましょう。そして貴方たちの言葉を伝えます」 人々は男に、塔を上りきるのは何年かかるか分からないことと、きっと途中で死んでしまうと警告しました。けれど、男は首を振って、 「私が姫に逢いたいのです。姫の哀しみを癒して差し上げたいのです」 男はまだ見ぬお姫様に、恋をしていたのかもしれません。 男は、塔の中に姿を消しました。
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