【第一部 かつての世界と、文明の明日に心血を注いだ天才の話】

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― 1 ― 八歳で学士を取った。 十歳で博士号を取った。 僕はいわゆる、天才と呼ばれる人種だった。 いや、それは正しくない。 正確に言うのなら、天才の中でも最も秀でた天才中の天才だった。 二倍以上歳の離れた天才ばかりの世界の最高学府で、僕は誰よりも優秀だった。 言うまでも無く主席で卒業し、優秀な頭脳ばかりが集められる研究所に入ってすぐに頭角を現した僕。 十代半ばで、世界の主要言語を完璧にマスターした。 十代後半で、当時不可能だと言われていたバルキスの定理の証明を成し遂げ、世界にその名を轟かせた。 二十代前半には、文明の未来を担う急先鋒として天才たちをあごで使い、寒さも暑さも防げる夢の繊維、一粒で三日間腹が満たされる夢の食料、冷凍睡眠などの基本理論を構築し、様々な発明の基を築いた。 そして二十代も半ばに差し掛かった僕は、それらの実用化を他者へと引継ぎ、この時代の文明の明日に必要不可欠であったエネルギー問題の解決に動き出すことになる。
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