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「何で知ってるの? って、顔に書いてあるわよ? でもね、わかっちゃうのよ、だって私、魔術師だし」
と、悪戯っぽく微笑むかなえさん。しかし、これである。上の台詞の通り、そういう設定が大好きなお方なのである。
「昨日の夜、何考えてたのかな? 昨日の夜は特別だったから、もしかしてそのせいかもよ?」
「特別って、どういう事っすか?」
とりあえず聞いとかないと、後でゴネるから、聞いてみる。
「昨日の夜は、満月で、それも血のような紅色だったのよ! その月は一瞬だけ色を変えて、その時に強く願った事が叶う、いわば願望器のような力を持っていてね。で、昨日何考えてたのかなって、聞いたの?」
「特になんも考えてないけど……強いて言えば、ちょっとは変わりたいなぁとか、面白いこと起きないかなーとかは考えてたけどね。いつも通り通りでしょ?」
「で、お兄さんはその月のおかげで、お姉さんになったと。何? 自業自得?」
「なわけあるか! で、ホントの所誰から聞いたの? まぁ、母さんぐらいしかいないんだけど……」
「えー、もうちょっと続けてくれても良かったじゃん。……まぁ、お姉ちゃんから聞いたんだけどね。」
とまぁ、こんな感じの会話が何時もの事で、かなえさんも、設定だって認めてる。おかげでまだ話しやすい人である。
「と、そろそろ料理作らないとね」
そう言って、かなえさんは、厨房に入っていった。
「で、お姉ちゃんは、女の子になりたいなぁーと、ずっと考えていたんだぁ?w」
梓は、口元をニタァーと歪めて覗くように俺の顔を観察する。
「女の子になりたいとは思ってないからな?! ちょっとした変身願望だっつーの!」
「厨二病乙w」
はいはい、どうせ厨二病ですよーだ。答えも返す気力の無い俺はそのまま机に突っ伏す。
「ていうか、いいかげん、俺っていうの辞めない? 女の子なんだし」
「そりゃごもっとも。でも変えないと変か?」
「変」
「即答?!」
「だって、そんな線が細くて、いかにも女の子ですって身体なのに、ガサツな男口調とかあり得ないでしょ? 元男のお姉さんなら分かるでしょ?」
「……そりゃ、そうだけど」
「そうよ? 折角可愛くなったんだから、言葉使いも可愛くしないとね? はい、いつものオムライス。今日はおごりでいいわ。おもしろいものが見れたし。」
「いいんすか? じゃ、お言葉に甘えて、いただきまーす」
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