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「はぁ……」
「ちょと、何辛気臭い顔してんの? せっかくのあたしの服が台無しじゃない」
「すいませんねぇ!」
時は10時ちょっと過ぎ。このまま学校に行って自分の席に着いてもまた、誰こいつ? 的な反応されるので、母さんが入学手続きをしてくれるらしい。お金のかかる息子で大変申し訳ない。で、だ。当然男の俺の部屋に女物の服がある訳でもなく、買いにきているしだいである。因みに妹様はというと、「学校休む! それに兄さんじゃまともに服のセンス無いからあたしがしょうがなくついてかないとね?」とか言ってちゃっかりついてきている。つーか、こいつ学校サボりたいだけだろ……
で、外出るのに女の子が男物着るなんておかしい! とか宣う我が家の女性陣にされるがまま、こうして見事妹の服を着せられてる訳で。しかも、下着もそうだし、スカートだし、スースーしまくってハンパないっつーか。まぁ、そんなこんなでテンションだだ下がりな訳でして。
「イイじゃない? 女の子なんだし?」
「なわけあるか! メイクまでしあがって……」
「だって、メイクのノリがイイんだもん。やらなきゃもったい無くない?」
元男なんだし、どうとも思わんがな……
「ていうか、ホント綺麗よねぇ。元がアレだとは誰も思わないよね。ていうか背も縮んでるし」
ここで俺の今の風体に補足を。元々そんなに高い方でも無い背は更に縮み、今は150cmくらいに、髪は亜麻色のセミロング。片側だけ縛って、サイドポニーみたいな感じになっている。顔立ちは、ぱっちり二重に、少し釣り上がり気味の猫目。鼻は、すっと通っていて、口元は薄め。でもって小顔。服は妹様の薄い緑のギンガムチェック。腰の辺りにベルトみたいな紐で縛るタイプのやつ。靴は編み込みサンダルみたいな感じで、夏先取りみたいなファッションである。鏡なんてもう見れないくらいに女の子の格好になっていて、男女入れ替わりの現実を強制的に受け入れさせられている。これからもこんな調子で買い物に出かけるとなると、かなり鬱になるので深く考えないようにしようと思う、今日この頃である。
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