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と、いう訳で、服を買いに向かった先は……
「平日だってのに人多過ぎじゃね?」
平日なのに、大勢の人で賑わうここは、去年の秋頃にできた大型のショッピングモールである。店内には、食料品店やフードコート、CDショップなど、バラエティに富んだ店舗が複数並んでおり、今日の目的の婦人服専門のお店もある。このお店の多さで平日だってのにこんな人混みができて、大変賑わっているわけである。
「こんなのまだマシよ? 休日なんてマジありえないから」
「うわ、考えたくもねぇし」
休日の人地獄を想像しながら店内へ。店内はクーラーが効いていて、外にいるよりかはいくぶん涼しかった。しかし、店内にも人が多く、更にさっきからチラチラと目線を感じるのは気のせいか?
と、俺がそんな事を思ってる事を露知らず、妹様は手を引っ張って一目散に目的のお店に連行された。男の時はこんな事なかったのにな……
で、着いた先は白を基調にした清潔感もあり、オシャレでもある店舗で、煌びやかオーラ全開で躊躇しまくりの俺がいる。
「何やってんの? もう兄さんじゃなくて、お姉ちゃんなんだからそんなに構えなくてもいいのに」
「……そりゃそうだけど、こうゆうの慣れないんだっての」
「はいはい、いいからちゃちゃっと入る! 服はあたしがてきとうに見繕うけどいい?」
好きにしてくれ……。女じゃないから(精神的な意味で)俺には分からん。
てきとうに頷いてると、またまた手を引っ張り出して、店内に連れ込む。その後は、「うわ、ウエスト細! イイなぁ」だとか、「脚キレー、スベスベしてるぅ」だとか、「あ、でも胸はそんなにないんだぁ」など、身体的な特徴を確認しつつも、いろいろ服を持ってきて着せ替え人形の如く、ぶっ通しで30分以上は拘束されていた。結局、他のお店にもいったりして、Tシャツやらキャミソールだとか、ストッキングだとか、まぁ沢山買いましたよ。軍資金は、俺の貯金だってのに。
とりあえずこれだけあればなんとかなるでしょ? と、梓が満足気に言って、今日の買い物は終了した。終了した時には、既に心身共に疲弊しきって、くたばりかけた俺と、余裕しゃくしゃくで、鼻歌なんぞ歌ってる妹という、なんとも両極端な二人組が出来上がっていた。
女子のバイタリティーって、すげーな、おい。
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