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それは一枚の写真の中に様々な人間の行動が凝縮された物が写っていた。
死への恐怖から他人を押しのけ逃げ惑う人、母親とはぐれて泣きじゃくる女の子、どさくさまぎれに商品を奪う男性。
デパートでの火災をおさめた人間の感情を爆発させたかのような躍動感があふれる写真。
「それは、私の撮りたかった写真ではありません。」
中年の男性は無表情のまま編集長に言葉を返す。
「それでもだ。お前はこれで結果を出していて賞も貰っている。」
二人は無言になり張り詰めた空気がまとわりつく。
「ふー。」
張り詰めた空気に嫌気がさしたのか編集長がため息をつく。そして意を決したようにしゃべり出す。
「さっき私はお前に才能がないと言ったな?それは幸せな写真に関してだ。だが、こういった危機せまる写真を撮る才能は類をみないほどある。」
ヒラヒラと写真を注目させるようにゆらす。
「それを生かせって言ってんだよ。つまんねー写真なんか撮ってないでよ。」
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